「そういう事だからさ、岡田。
おまえは諦めて帰れって」
様子を見かねて、岡田くんの肩を叩く和馬。
だけど、視線を上げた岡田くんは、和馬じゃなくて、あたしを見た。
「分かりました。
―――でも、先輩。先輩のしてる恋愛、楽しいですか?」
「……え?」
突然の疑問に眉をしかめると、岡田くんは穏やかな口調で諭すように続ける。
「先輩見てても、全然楽しそうに見えないんです。
いっつも、何か張り詰めてるように見えて……必死すぎて、楽しそうじゃないんです。
俺には、今、先輩が幸せには見えません。
だから、余計に諦めたくないって思ったのかもれません」
言い返そうとした時。
岡田くんと和馬のうしろにいる人影に気づいて、言葉を止めた。
暗くなった空の下、寮から漏れる明かりに照らされた、先生の姿が見えた。



