あの時ああする以外に選択肢すら浮かばなかった自分が思い起こされてきて、心底嫌気が差す。

余裕をなくして、感情的になった自分。

市川に……、不安をぶつけた自分。


強い自己嫌悪が襲ってくる。


それを許して微笑んでくれた市川に、

今まで以上の愛しさが溢れ出す―――……。



これ以上気持ちが大きくなったら、俺の中にある黒い感情だって、比例して大きくなるのに。

溢れだすラインが、低くなるかもしれないのに―――……。


止められない。



軋む胸。


『先生だけじゃないよ』

俺を落ち着かせようとするように諭す市川の声が、耳に張り付いたように響き続ける。