あたしの左手を、先生の手が壁に押し付ける。
右側は、壁についた先生の手が塞いでいる。
ノートの散らばった音にドキドキしていた心臓。
やっと理解した今の状況に、鼓動がまた少し速度を上げた。
「せ、先生っ……ここ、学校―――……」
そう言いかけて見上げた先にいたのは―――……。
今まで見た事のないような顔をした先生だった。
本当に無表情で……。
それは冷酷に見えるほどに、何の感情も映し出していないのに。
……なのに、つらそうに見えて仕方ない。
あまりに苦しそうに見える先生。
胸が刺されたように、鋭い痛みが身体中に走った。
動揺して瞳を揺らすあたしをじっと見据えた先生は、表情を変える事なく聞く。
「―――あいつに告白されたんだ?」
静かな声が床に落ちる。
感情を持たない声は、不自然にあたしの耳に届いた。



