甘い魔法②―先生とあたしの恋―



「あ、次体育なんで。行きますね。

また見かけたら話しかけます。市川先輩。

矢野セン、今度、壱と一緒に相談乗って。じゃ」

「ちょっ……」


あくまでも爽やかに、でもとてつもない破壊力をぶつけていった岡田くんが、片手を上げて立ち去る。


人気のない北校舎には、あたしと先生だけがぽつりと残されてしまって……。

すごく気まずい空気を感じながらも、なんとか笑顔を作って先生を見上げた。


「……授業始まっちゃうから急がな……―――っ?!」


歩き出そうとしたあたしの腕を、先生が力強く引っ張った。


そのせいで、抱えていたノートが音を立てて階段に散らばる。

先生が持っていたハズの問題集も、その上に重なるようにして落ちた。


静かな階段に響いた音に、身体がすくむ。

先生はそんなあたしになんかお構いなしに、ひんやりした壁にあたしを押しつけた。