「あ、次体育なんで。行きますね。
また見かけたら話しかけます。市川先輩。
矢野セン、今度、壱と一緒に相談乗って。じゃ」
「ちょっ……」
あくまでも爽やかに、でもとてつもない破壊力をぶつけていった岡田くんが、片手を上げて立ち去る。
人気のない北校舎には、あたしと先生だけがぽつりと残されてしまって……。
すごく気まずい空気を感じながらも、なんとか笑顔を作って先生を見上げた。
「……授業始まっちゃうから急がな……―――っ?!」
歩き出そうとしたあたしの腕を、先生が力強く引っ張った。
そのせいで、抱えていたノートが音を立てて階段に散らばる。
先生が持っていたハズの問題集も、その上に重なるようにして落ちた。
静かな階段に響いた音に、身体がすくむ。
先生はそんなあたしになんかお構いなしに、ひんやりした壁にあたしを押しつけた。



