「彼氏がいるから、とか分かってても、別に想うくらいいいでしょ?
矢野センもそう思わない?」
「……さぁ」
曖昧に答えた先生をじっと見つめても、先生はあたしの方を見てくれなかった。
先生が何を考えているのかが気になって横顔を見つめ続ける。
そんなあたしに気づかなかったのか、岡田くんはそのまま続けた。
「先輩がどんな恋愛をそんなに必死になって守ろうとしてるか分かんないけど……。
俺は、俺の恋愛をしっかりこなしたいんです」
「でも、そんなの困るっ……」
「なんか、矢野センの前でこんな宣言しちゃってすみません。
でも、いつでも会えるわけじゃないし、チャンスを逃したくなかったんで。
矢野センも、生徒の恋愛になんか興味ないのに聞かせちゃってごめんなー」
終始明るい声色の岡田くんが、先生に話しかける。
だけど、先生は何も答えなかった。



