甘い魔法②―先生とあたしの恋―



なんとなく周りを気にして敬語にしてみるも、なんだかその方が余計に不自然に聞こえた。

よく考えてみれば、先生はみんなから敬語使われてないし。

話し方はいつも通りでもいいのかな。


うん。と一つ頷いていると、それを不思議に思ったのか、先生が振り返る。

そして、あたしの顔をじっと見つめた。


数学学習室からそれほど離れていない、北校舎の階段脇。

窓がなくて薄暗いそこは、人通りは極めて少ないけど……こういうのはちょっとまずいと思う。


「な、なに?」

「……なんかおかしいな、おまえ」

「おかしくなんかっ……」

「あ、市川先輩」


全力で「おかしくない」って否定をしようとした時、階段に大きな声が響いた。

呼ばれた名前にびっくりして振り返ると……、そこには。


「……」


会いたくない人の姿。

先生と一緒の時なんて、絶対会いたくない人。


ちらっと先生を見上げると、先生は不思議そうにその人物に視線を送っていた。