甘い魔法②―先生とあたしの恋―



「早く行かないと一時間目始まっちゃうよ。

あんまり気使いすぎても逆に不自然だし、気にしないでノートだけちゃちゃっと取ってきちゃいなよ」

「……うん」


諒子の笑顔に後押しされるように教室を出る。

廊下の時計は8時45分を指していた。

一時間目が始まるまで後10分。


学年別の教室が揃う南校舎から、学習室ばかりの北校舎に向かう。

渡り廊下を渡って一度角を曲がると、すぐに数学学習室に着く。


落ち着かない気持ちを抱えたまま、ドアを3回叩いて中に入った。


「失礼しますー……」


そう言うと、机に向かっていた先生がぱっと顔を上げて、あたしの顔を確認するなり眉をしかめる。

……やっぱり週番だって知らなかったんだ。


「3-5の週番ですけど……」

「あー……なんだ。市川が週番だったんだ。……びびった」


あたしの訪問理由に納得がいった先生は、笑顔を見せてから机の端に積みあがっているノートに視線を向けた。