「なんでもって……」
「すっげぇわがままだろうが、甘ったれだろうが、男勝りだろうが……。
どんなムカつく性格でも、市川だっていう理由だけで許せる」
「……すごいわがままでも甘ったれでも男勝りでもないけど」
先生のストレート過ぎる言葉への動揺を隠して、わざと反抗的な言葉を言う。
だけど、先生はそんなあたしの態度に文句も言わずに、座るように促した。
あたしを甘やかすのもそうだけど、最近はこういう奥歯がむず痒くなる言葉も度を超してる。
……気がする。
「最近は男も甘いモン食べたりするらしいな。
コンビニに『男スイーツ』とかいうコーナーが出来てた」
先生が、あたしから受け取ったチョコの箱を開けながら笑う。
「みたいだね。でも、別に男だからダメって訳でもないし。
甘いモノは女の子のモノみたいな、変な定着がおかしいのかも。
和馬も甘いの好きだし」
「へぇ。でもあいつサッカーやってるし、糖分とっとかねぇとあんなに走れないしな」
「んー……まぁそうみたい。
今年はバレンタインにもねだられなさそうだし、よかったけど」
何気なく言った言葉に、先生は少しだけ真面目な顔をする。
そして、手元のチョコに視線を合わせたまま、あたしに聞く。



