「先生」

「ん?」

「心配してくれてありがとう」


階段途中で立ち止まって、振り返る。

先生より一段上にいたあたしは、同じ目線になってる先生に微笑んでから、触れるだけのキスをした。


胸の中を覆う不安をかき消したくて。


そのキスに「ありがとう」と「ごめんなさい」の意味があると思った先生は、あたしに優しく微笑む。


先生とのキスに、

先生の笑顔に、取り除けると思った不安は……。


こんなに先生の近くにいる今でさえ、気持ちの中から消えようとはしなかった。



『守りたい恋』

それを考える度に、誰だか分からない犯人があたしの不安を煽る。