待ち合わせ時間 …時……分
ただ今の時刻  8時43分




窓から溢れる朝日によって透き通った金色のように輝くシャンパンアッシュの柔らかい髪を揺らしながらヴァイオリンを片手に音を奏でている、この邸の子息の姿に使用人でさえ目を奪われて本来の目的である用事を忘れそうになった。




「…っナツ様」



一楽章を弾き終えたのかヴァイオリンを顔から離す、その様さえ絵画のように美しく見惚れてしまう。





「奥様が学校はいいの?とご心配されておりました」




少年はフワリと微笑み、デスクの上にあった携帯を開いて使用人に渡す。





「しぃが遅れたみたいで待ち合わせの時間が遅くなったんだ。音弥からメール来た」




しぃが言い出しっぺなのに、と溢しながらも笑顔で視線をふ、と時計に移した。




「ん、あと一曲は弾けそうかな」と呟いた瞬間に使用人の手中で携帯が鳴り響く。




少年は流れるような手付きで携帯を奪って操作し、耳に当てる。そして、使用人に人差し指で静かにするよう合図を送った。




「言い出しっぺさんからの御苦言だ」




――相良 ナツ 15歳
相良グループの次男。兄は、留学中。