ビルの前の喫煙スペースでタバコを吸いながら悩んでいると、少し離れたところに公衆電話があるのが見えた。
手元の白いタバコの箱には、マモルにもらった紙が挟まっている。
あたしは自分を情けなく思いながら、公衆電話に100円玉を入れ、マモルの番号を押したーー。
「お待たせ」
マモルが到着したのは、それから約20分後。
あたしは思ったより早い到着に驚きつつ、周囲の人に見えない角度で押しつけるように300万を突き返す。
「返す」
「サエって、意外に小心者なんだね」
おかしそうに笑うマモル。
事情は電話で自分から話したが、改めて他人に指摘されると恥ずかしい。
「うるせーな。つーかそもそも300万も持っていく必要なんてなかったじゃんか」
「確かにね。でも俺、バッグとか持ってきてないし財布にも入らないから、とりあえずサエが持っててよ」
返したはずの金は、すぐにあたしのバッグに戻ってきてしまった。
私はあからさまに舌打ちをしたが、マモルはニコニコ笑っている。
なんか……こいつに遊ばれてないか?
ムカつくけど、一緒にいてくれるだけで大金を持ち歩く重荷は軽減した。
マモルはビルに入るなり眉間にしわを寄せる。
「うわ、ギャルばっか。なんか怖い」
「ヘタレかよ。ほら、男だっているじゃん」
服を見ているカップルの片割れを視線で指すと、マモルは思い立ったように笑った。
「なるほど。彼氏だもんね」
そう言って当然のようにあたしの手を握る。
「ちょっ……」
驚いて振り払うと、マモルはあたしがこうすることを予想していたかのようにすました表情をした。



