ゲイな彼と札束


これまでの短い時間で築いていたマモルのイメージがボロボロと崩れる。

男が……男を?

そんな人種がリアルにいたとは。

「あんた、オカマなの?」

「俺は普通に男だよ。女じゃなくて男が好きってだけ」

「だけ、って……」

そんな簡単なことなのか?

このマンションを買ったのも、手切れ金を突きつけたのも、ラッキーストライクを吸っていたのも……男。

でもじゃあ、あたしを連れ込んだのは何だったんだ。

「だから、俺は別にサエをどうこうしようなんて思ってないから」

安心しろってか。

できるかってんだ。

未知のものに対する恐怖に似た感情が湧き、少しだけマモルから身を離した。

「何のためにあたしを連れ込んだんだよ」

「だから、話し相手」

マジでそれだけのために?

バカじゃないの、こいつ。

話し相手以外、何にも見返りなく、純粋に傷が治るまであたしの面倒見ようとしてたのか。

どんだけお人好しなんだよ。