ゲイな彼と札束


「うー、さぶっ。こんなとこに何しに来たん?」

やってきたのはあたしが放り込まれた川。

病院送りにされた河川敷だ。

冬の川辺の冷たい空気は澄んでいて心地良い。

フレッシュな空気とせせらぎで、酔いはどんどん醒めていく。

「あたしさ、東京に逃げてる間もサバイバルな生活してたんよ」

「サバイバル?」

「うん。殴られたり蹴られたり、逃げたり捨てられたり拾われたり。それでも親父よりはマシだと思って」

「でも親父さん……」

「そう。親父は死んでたのに。逃げる意味なんて、もうなかったのに。アホだよねーほんと」

軽く石を蹴ると、ぽちゃんと軽い音を立てて水の中に沈んでいく。

あのときの水の冷たさを思い出して、ブルッと体が震える。

あの日はもう死んでしまおうと思った。

けれど、あたしは生きている。

マモルとこれから60年一緒に生きる約束をしてしまった。

あたしの人生は、予定よりずっと長くなってしまった。

「あたしらさぁ、色々やったやんか」

「良くないこと?」

「うん。人に迷惑かけたり、傷つけたり。……でもあたし、当時は悪いなって思ったり反省したりしたことなかった」