返信を終え携帯を手放すと、頭に何か温かいものが乗っかった。
ヒロキの手だ。
「東京が嫌になったら、いつでも帰ってこい」
「うん」
そう言ってくれる友人がいるのは、幸せなことだ。
この地にあるのは嫌な思い出ばかりだと思っていたけれど、ヒロキがいるからそうではないと思える。
「あのホモ野郎に構ってもらえなくて体が寂しくなったらいつでも……」
ーードカッ。
再びヒロキが床に転がる。
「ケガ治ったばっかりやのに、蹴らすなや」
「やったら蹴らんけりゃいいやろが!」
この日はヒロキと二人、朝まで酒を飲みながら過ごした。
バカな話をして、バカみたいに笑った。
ちゃんといい思い出を持って帰れるように、楽しかった時の話をたくさんした。
あたしは明日、本当の意味でこの土地から巣立つ。
傷だらけの人生から卒業する。
気持ちは3年前より断然軽い。
脚を取り戻した鳳凰が大地を蹴り上げ、あたしを羽ばたかせてくれているのかもしれない。
外がうっすら明るくなった頃、あたしはヒロキを連れて部屋を出た。



