「『エリーゼのために』だね、小ロンド形式」

「ロンド……」

「ロンド形式っていうのは、同じ旋律が異なる旋律を挟みながら何度も繰り返される楽曲形式。例えばABACADA……みたいにね。違う旋律に入ってから、また最初の旋律に戻るんだよ」

「そうなんだ……」

「小ロンド形式は、そのロンド形式が短い曲。『エリーゼのために』、好きなの?」


蓮くんは音楽に詳しいらしい。

まぁ、白百合さんがいたんだもんね。


「この曲ね、『暴走』の時に聞いたの」

「……え?」

「あたしが目が覚めた時にはすでに曲は止まってたんだけどね、夢の中でこの曲が流れてた。ちょっと暗い感じのこの曲が、その時の白百合さんの気持ちみたいで……」


悲しみが、強く伝わってきたんだ……。


「あたし、これにしようかな」

「え?」

「『エリーゼのために』。あたし自身好きだし、何より……白百合さんを忘れないようにって感じ。あれもいい思い出だと思うんだ」


だから、この曲を聞く度に、思いだせるように。