一番端にある亮の部屋はとても静かで…
奈緒の声だけをよく響かせていた。
「あたしのせいで…
しなくてもよかった勉強して…
人とは違う進路を進む事になっちゃって…
本当にごめんなさい…」
あの時…
あたしが佐伯さんを叩かなければ…
亮はあの屋上にいたのに…
毎日一緒にお弁当を食べてたのに…
全部、全部あたしのせいだ…
立ったまま
顔を歪ませてうつむく奈緒に
亮が小さくため息をつく。
「…おまえの悪いくせだよな。
そうやっていつまでも自分を責めるのって」
ため息をつかれた事が少しショックで…
奈緒は顔が上げられなかった。
亮が自分を責めてないのなんか分かってるのに…
いつまでもその事にこだわってしまう自分はすごく情けなくて…
…そのうち
亮にも嫌われてしまう気がして…
気配を感じて顔を上げると
いつのまにか目の前に亮が立っていた。
高い位置から奈緒を見下ろしていて…
その目がとても真剣で…
奈緒も黙ったまま亮を見つめた。
「…オレは退学になった事後悔してない。
奈緒を守れたんだからそれでいい。
だからおまえももう割り切れよ」
びっくりするくらい真剣な亮の目に逆らう選択肢なんてなくて…
まるで初めて励まされた時みたいに偉そうで…
奈緒が困ったように笑った時…
突然亮の唇が重なってきた。
「…っ」
びっくりして体をすくめた奈緒だったが
目を閉じて…
亮の背中に腕を回した。
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