イジワルな恋人〜番外編〜



「水谷」


放課後の廊下で呼びかけられて
奈緒が振り向いた。


「桜木…受かったんだって?

よかったな」


誠の姿に奈緒が笑顔で答える。


「はい。

ちゃんとやれば亮頭いいみたいですね(笑)」


「最初っからそうしてれば
退学なんてなんなかったのにな(笑)

おかげでこっちは同級生に格下げだよ」


誠は亮の受験した大学に一足先に推薦入学を決めていた。


予期せぬ同級生に
誠が困ったように笑顔を浮かべる。


誠の言葉に奈緒も笑顔になった。


下校時間になったばかりのせいか

廊下も下駄箱もたくさんの生徒で溢れ返っていた。


2月の寒い空気は
誰かが開けっ放しにした玄関から入りこみ、

下駄箱の気温を下げていた。


床のコンクリートが余計に寒さを誘う。


「それより…」


一緒に校舎を出た誠が奈緒を見下ろしながら口を開いた。


「文化祭、メイド喫茶だって?(笑)」


誠の言葉に奈緒が顔をゆがめる。


「誰から聞いたんですか?!

…もう最悪です」


ふてくされたようにため息をつく奈緒を誠が笑った。


「まぁ、そう言うなよ(笑)

オレ達3年は楽しみにしてるからさ」


本来なら11月に行われる文化祭が2月にずれた事によって
受験真っ盛りの3年生は出店が禁止された。


当日は自由登校でいい事になっていた。


「先輩はくるんですか?

文化祭」


「くるよ。

…ってゆうか3年なのに、強制登校(笑)

人使い荒い先生で参るよ」


優秀な誠は先生達にもよく頼られているのは奈緒もよく知っていた。


「せめて水谷のメイド姿でも見とかなくちゃな(笑)」


誠が短いため息をつきながら言った言葉に


奈緒が苦笑いした。



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