「奈緒~、おっはよ~」


教室に入ってきた奈緒を元気よく呼んだのは梓だった。


奈緒が笑顔を返すと

梓がウキウキさせた表情で奈緒に近づく。


「で…?

どうだった?」




昨日は亮の大学入試の合格発表だった。


受験なのに余裕を見せる亮を心配して…


あまりに心配で結局合格発表を見に行く亮に奈緒も同行した。


特待生から外されることを気にして
今まであまり学校を欠席した事のなかった奈緒だったが

真一がある程度の欠席なら問題ない事を教えてくれて…


葛藤に葛藤を重ねて、

昨日、初めて学校をサボった。



「受かってた(笑)

…本当に何やっても余裕なんだもん。

こっちが心配になっちゃうよ」



自分の番号を見つけた亮は

『…受かると思った』

と余裕の笑みをこぼして…


奈緒がしわくちゃになるまで握り締めていたお守りを

バカにしたように笑いながら

『心配しすぎなんだよ(笑)』

と途中にあったゴミ箱に捨てた。




「本当になんてゆうか…

恐いもの知らずなんだよね…」


昨日の亮を思い出しため息を漏らす奈緒を
梓が突っつく。


「でも好きなくせに(笑)」


ニヤニヤしながらからかう梓に

奈緒が照れ笑いを浮かべた。


「そういえば…

昨日のホームルームって
文化祭の出し物決めたんでしょ?

何になったの?」


本当なら11月に予定されてた文化祭は
途中で2月に変更された。


ブーイングする生徒に
先生は何も理由は言わなかったが…

もしかすると亮の退学の件が何か関係あるのかもしれないと

奈緒は密かに思っていた。


実際のところは今となっては闇の中だったが…


奈緒の言葉に梓がニコっと笑顔を見せる。


「…何?(笑)

なんかすごく嫌な感じなんだけど…」


「1年2組の出し物は…

『メイド喫茶』に決定しました!」


梓が教室の壁を指差しながら言った。


.