「責任もつなんて言いながら突然帰すなんて
智也くんもいい加減な人よね」
美沙が帰るなり、母親が智也に毒づいた。
そんな母親に我慢できなくて…
美沙の気持ちが溢れる。
「自分は母親の責任放棄しときながら
他人の悪口ばっかり…
相変わらずだね」
今までどうでもいいと思ってた。
今だって本当はそう思ってる。
この人にあたしが望むような『母親』が出来ない事なんて
ずっと前からわかってる。
だから今まで何も言わなかった。
でも…
「智也のこと悪く言わないで」
智也を見下すのは許さない。
何も言わずに驚いた顔をしている母親にそう言うと
美沙は自分の部屋に上がった。
智也からもらった部屋とは違い
日当たりのあまりよくない部屋はひっそりとしていた。
卒業式の日に出て行ったままの部屋に少しだけ安心してベットに横になる。
出てくるのはため息ばかりだった。
あんな事…
言うつもりじゃなかったのに…
奈緒のビックリした顔が頭をよぎる。
あの事件に一番こだわってるのは…
結局あたしなんだ…
あたし一人抜け出せてないんだ…
暗い部屋が美沙の気分までもを落ち込ませていった。
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