イジワルな恋人〜番外編〜



本当は謝りたかった。


でも…

あたしの意地がそれを許さない。


わざわざ謝ろうと思って行った奈緒の学校でも
奈緒の顔を見た途端に嫌味ばかりが口をついた。


亮と奈緒を引き裂こうとしていたわけではなかったのに…


自分のした事で亮が停学になり…


初めて奈緒の敵意が美沙に向けられた。



美沙自信、嫌われてる事はわかっていた。


それでも…

こんなに敵意むき出しの奈緒は初めてで…


悔しくて情けなくて…


本音が口をつく。


「被害者ぶるのもいい加減にしてよ…」



体中が震えて…

涙もにじんできて…

頭に血が上って



ひどい言葉を奈緒にぶつけた。


自分でも止められなくなった時…


智也の声が聞こえた。


「美沙、いい加減にしろよ!」


珍しく怒鳴った智也の声が頭に響く。


コントロールできなくなってしまった自分を
止めてくれた安心感からか涙が溢れてきた。


止まらない涙が
更衣室の床に落ちていく。


「佐伯さん…

あたしは同情なんか欲しくなかったよ。


家族が生きてればそれだけでよかった。


…だから謝らない」


奈緒が最後に美沙に言った言葉。



最後まで奈緒の言う事は正しくて…


美沙はただ床に落ちた涙を見つめていた。


あふれ出てくる涙は止まることを知らなくて…


目の前の景色が歪んでいく。




誰か助けて…



肩を揺らして泣く美沙を
智也が優しく抱きしめた。




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