「事件の一ヶ月くらい前に川口と会ってたらしいよ?」
美沙が母親から聞いた事を亮に言った。
これを聞けば亮も奈緒に愛想を尽かすと思ったから…
でも…
愛想を尽かすどころか
亮は奈緒を守ろうとしていることに気づいた。
奈緒のために必死で…
それが美沙にも伝わってきて美沙の気持ちを余計に苛立たせた。
「美沙、最近桜木にも手出してるのか?」
久しぶりに一緒になった夕食で智也が聞いた。
「違うよ…
ちょっとからかってるだけ」
美沙が無愛想に応える。
智也が好きだという気持ちは今も変わらない。
でも…それよりも今は奈緒への憎しみのほうが大きかった。
「からかうって…
桜木は水谷と付き合ってるんだろ?
そうゆうのやめろよ」
「だって!
水谷さん、川口と付き合う約束してたくせに他の男と付き合って…
自業自得じゃない!
なんであたしが責められるの?!」
興奮して言う美沙に智也がため息をつく。
そして美沙を困った顔で見た。
「おばさんから聞いたの?
…その話ちゃんと全部聞いた?
水谷がその時の記憶が抜けてることとか…
川口がナイフで脅迫して取り付けた約束だとか…」
え…?
黙り込んだ美沙に智也がもう一度ため息をついた。
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