イジワルな恋人〜番外編〜

「…どんな子なの?」


「可愛い子。

川口って面食いだったんだね」


動揺を見透かされないように
美沙が冷静を装って話すと母親がため息を漏らした。


父親の悪口を言う前にかならずつくため息を…


しかし母親の愚痴の標的になったのは父親ではなかった。


「でもその子も…まぁ、確かに可哀相だけど自業自得よね。

川口さんに聞いたんだけど
事件の日が初対面じゃなかったらしいわよ。


数日前にも会ってて、そこで付き合うとか約束したらしいのよね。

それなのに、他の男の子と付き合い始めたから頭にきてあんな事…」






え…―――?





『初対面じゃなかった』

『付き会う約束』

『他の男』



美沙の頭の中で母親の言葉がぐるぐる回る。


やっと言葉の意味を理解できたとき…



母親の言葉を鵜呑みにした美沙の気持ちは

怒りでいっぱいだった。



…どこが被害者?


自分で蒔いた種じゃない。


あたしは…

あんたのせいで…



怒りの矛先は…


奈緒一人に向けられていた。



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