「水谷奈緒です」
智也に美沙を紹介され、
奈緒が優しく微笑みながら言った。
「…よろしくね」
奈緒の笑顔に少し戸惑いながら美沙が応える。
綺麗に作られた笑顔が…
余計に悲しく見えた。
「ね、水谷さんいくつ?」
ずっと気になっていたことを美沙が聞いた。
奈緒が店内を案内しながら答える。
「15です。
高校1年ですよ。
佐伯さんは?」
「あたしは18。
今月高校卒業したの」
「そうなんですか。
じゃあ先輩ですね」
笑顔を向けてくる奈緒に
美沙も笑顔を返した。
『もう大丈夫なの?』
聞きたかったけど聞かなかった。
智也に昨日言われてたから…
『お互いのためにも事件の事は一切話題にしない方がいいと思う』
その通りだと思った。
あたしだってもうあんな目に遭うのはやだし
言ったところで何の特にもならないし…
でも…
この子の目が…
吸い込むようにあたしの言葉を誘い出す。
思わず言いそうになる。
あたしが言ったら…
この子はあたしを嫌うんだろうな。
今はこんなに笑顔を向けていても
あたしが加害者の家族だって知ったら
きっとあたしを憎むんだ。
そんなの分かりきってる。
あたしが被害者だったら絶対にそうだから…
だから言わないよ。
智也に心配されなくても
言うつもりなんかない。
自分に不利になるようなこと…
言えるわけないじゃん。
あたしは決していい子な訳じゃないから。
自分に一番有利な道を選ぶ…
それが一番楽だって…
今まで生きてきた中で思ったから…
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