「あたし今日からバイト行ってもいい?」
朝ごはんのトーストを食べながら美沙が智也に言った。
「別にいいけど…
やるからにはちゃんとやれよ?
後、親戚だって事は伏せるから。
うちの店、コネ採用ないから」
ひげを剃って髪を整えている智也が洗面所から答えた。
「ちゃんとやるから大丈夫だよ。
智也牛乳飲む?」
聞きながら美沙が冷蔵庫から牛乳を取り出してコップに注ぐ。
「あ、飲む」
智也の答えを聞いて
コップをもう1つ増やした。
美沙が両手にコップを持って椅子に座ると
用意を終えた智也が美沙の前に座る。
「なんか美沙と向かい合って食べるとか変な感じだな(笑)」
首をかしげながら言う智也に
「そう?」
と答えながら牛乳の入ったコップを智也の前に置いた。
遮光ではない普通のカーテンは
開けていなくても嫌になるくらいの明かりが差し込んでくる。
いつも暗い部屋で過ごしていた美沙には
そんな事でさえも心地よかった。
…一番の理由は智也がいるからだろうけどね。
いつになったら気づくんだろ…
まぁ…
別に気づいて欲しいわけでもないけど。
智也が今のままでいるなら…
女の影を見せずにあたしの隣で笑っててくれるなら…
あたしの気持ちに応えてくれなくてもいい。
「恋人」じゃなくても
隣にいられればそれだけでいいの。
一番じゃなくてもいい。
智也があたしの他に一番を作らなければ…
あたしは
智也の隣いられるから。
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