「なんか…
思ってたより全然キレイなんだけど」
部屋に入ってぼーっとしながら美沙が言った。
男の一人暮らしなんて
当たり前のように散らかり放題の部屋を想像していた美沙には
少し衝撃的だった。
…あたしの部屋よりきれいだし。
思い出される自分の部屋が不憫に感じる。
散らかしっぱなしにしてきてしまった部屋…
…あの部屋には
つらい思い出しかない。
「そこの部屋好きに使っていいよ。
一応一番広い部屋なんだからな。
大事に使えよ?」
智也が指差した部屋に美沙が足を踏み入れる。
8畳ほどのフローリングの部屋。
南側で大きな窓から日がさしてくる。
何にもない部屋が美沙の気持ちを後押しする。
…あたしも一から始めなきゃね。
「よし!!
智也も手伝ってよ」
いくつものカバンから荷物を引っ張り出しながら美沙が智也に声を掛けた。
「手伝ってやりたいところだけど
オレ仕事戻んなきゃだからさ。
夜も毎日11時くらいだから美沙も適当に過ごしてくれるか?
金は…」
「お金ならお母さんに持たされたのがあるから大丈夫だけど…
智也毎日そんな遅いの?」
美沙が自分の部屋からリビングを覗くと
智也が仕事の用意をしているところだった。
「まぁ、店長だからね」
そう言うと、にこっと笑って
冷蔵庫から2リットルのスポーツドリンクを出して
そのまま飲んだ。
「あ、美沙もいるんだからもうやめないとな(笑)
コップ買ってこなくちゃ」
舌を出しながら笑う智也に少しドキドキしながら
美沙が言う。
「あ、いいよ。
あたし探検がてら買ってきとくから」
なんだか夫婦みたいな会話にうれしくなりなって笑みがこぼれた。
…ってカップルにもなってないけど。
自分で突っ込んで憂鬱になりながらも心臓が早いリズムで動いていた。
これから始まる智也との2人暮らしにドキドキせずにはいられなかった。
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