イジワルな恋人〜番外編〜





「智也くんが面倒見てくれるなら…」


智也をじろっと見ながら言う母親に
美沙の表情が一気に曇る。



…よく言うよ。

自分はお金だけ渡して
たいして面倒なんか見てないくせに。


世間体だけしか気にしてないくせに。


あたしの成績も見た目も…
本当はどうでもいいくせに周りの目を気にして
母親ぶって注意する。


別に…

もう何も期待してないからどうでもいいけど…


お母さんに何かを期待しても裏切られるって知ったから。




母親をにらみながら毒気づく美沙のおでこを
智也がゆびで小突く。


「はい。責任もって預からせてもらいます。

…じゃ、卒業式の日にでも迎えに来るからちゃんと用意しとけよ?」


智也の言葉に美沙の顔が再び明るさを取り戻し、

元気よくうなづいた。




「そんな広い部屋じゃないから
やたらと荷物持ってくんなよ?」


そう残して智也は仕事があると言って帰っていった。



重たい雲がかかっていた美沙の未来に
一気に光が差し込む。



嫌なこと全部をここへ残して


新しい生活を始められる気がした。



嫌な自分も全部全部…


この家に置いていく。




そしたら本当のあたしに戻るんだ。


ずっと押し殺してきた自分に…



押し殺していないと…


作った自分を演じてないと

壊れちゃいそうだったから…


生きていけないって思ったから押し殺した。



でも智也と一緒ならそんな必要ない。


誰も知らない場所ならそんな必要ない。


愚痴しか言わない母親も

陰口をたたくクラスの女子もいない場所…





いくつものカバンに荷物を詰め込みながら

智也との生活に胸を弾ませていた。




.