「よかった~…
学校行ったら来てないって言われてさ…
…大丈夫か?」
スーツ姿で土手を降りてくる智也から顔を背けながら
美沙が平常心を装って答える。
「なにが?」
「いじめられたんだろ。
大体わかるよ。
高校生がしそうなことなんて。
本当にどうしょうもないよな…。
…よし!オレが今から学校行って殴ってきてやるよ」
土手を登りなおす智也を美沙が止めた。
「ちょっと!!
別にいいから…っ」
智也の腕を掴みながらそう言う美沙に智也が優しく笑いかける。
「おまえは本当に泣き虫だよな(笑)」
腕を掴んだまま涙を流していた美沙の頭を智也が撫でた。
涙が流れたのは…
智也が優しかったから。
学校でのいじめなんて大した事じゃない。
だけど、智也があたしを心配して会いに来てくれたことがうれしかったの。
誰にも心配されてない。
そう思ってたから…
智也のスーツ姿がうれしかった。
伸びた髭がうれしかった。
あたしのために慌ててきた智也が…
嬉しくて仕方なかった。
「おまえ…
泣きすぎだろ(笑)
あ~あ…スーツに鼻水が…」
そう言いながらも
優しく頭を撫でてくれる智也の腕の中で
美沙が笑った。
『ありがとう』
なかなか素直になれずにいえない言葉を
心の中で何度も繰り返した。
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