それから美沙は学校へ行くようになった。


智也に説得されたからっていうのもあったが

それよりは
智也と並んでも恥ずかしくない自分になりたかったから。


ただ大きくなりたい。


そう思ってたことが間違いだって気づいた。


大きくなったって中身がこんなんじゃ意味がないと思った。


追いつきたいなら変わらなきゃって。


真面目になる事が正しい答えとは思わなかったが…


それでも他の方法が思い浮かばなかったから…


美沙はとりあえず学校へ行って、男遊びもやめた。


両親は相変わらずだったから…

見てみない振りをしていた。


帰らない父親にヒステリックな母親。


それでもお正月には家族3人で仲良しな振りをする。


高校受験に受かっても「おめでとう」の一言もなかった。




「どうでもいいよ」


美沙の家族を心配する智也にもそう言った。


「だけど…」


「もうあたしがどうにかできる事じゃない。

期待するのも疲れたし…」



智也だけがいればいい。


その言葉はまだ言えなかった。


社会人になって街を離れてしまった智也。


それでも月に何度かは美沙に会いに来ていた。


美沙の家族がうまくいっていない事を知っているのは親戚の中でも智也だけだった。


智也には素直に相談する美沙も他の親戚には一線置いていた。


夫婦円満な演技をする両親に無愛想な娘。


「あんなにいい両親なのにね」


親戚に何気ない言葉に傷付いたこともあった。


でも連れ出してくれる智也はこの街にはいない。



そう思うと自分が強くなるしかないと思った。



そんな中でも頑張っていこうとしていた矢先に


あの事件が起こった。




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