「色々悩む時期だとは思うけどさ

オレでよかったら相談に乗るから会いに来いよ」


美沙は涙で濡れた顔を膝にうずめながら頷いた。


「毎週来てたくせに急に来なくなるんだもんな(笑)

寂しいじゃん」


美沙の涙に気づかないふりをして智也が話す。




ねぇ、智也。


あたしが心配?

それは親戚として?


でもそれならそれでいい。


誰といても満たされない心が
智也には反応するの。


どんなかっこいい男といたって楽しくなんかなかった。


あたしの心が求めていないから。


9歳も年上で、別にかっこいいわけでもない。


それなのに、あたしは智也といれば満たされるんだ。


初めてあたしを甘えさせてくれたってだけなのに…


その心地よさが忘れられなくて…


ずっと感じていたくて…




ただそれだけ。






なかなか止まらない美沙の涙を見ない振りして

智也は川に向かって石を投げていた。


智也の投げる小石がポチャンと音を立てる。


その音が

うつむいたままの美沙の耳にも届きとても心地よく感じた。






智也が好き。


だから智也のくれる言葉や音が心地いいの。



だけど、言えない。


こんなあたしは情けなさ過ぎるから…

智也につりあわないのが分かってるから…



だから…



まだ言わない。




顔をあげた美沙を見て

「帰るか」


智也が笑顔で言った。




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