イジワルな恋人〜番外編〜


中学に入ってから
美沙はいろんな男と付き合った。


不良と呼ばれる先輩、同じ学年のサッカー部のエース。


誰にも恋愛感情なんかなかった。


全部、智也に心配をさせるため。


少しでも女として見てもらうため。


美沙の帰りが遅ければ、美沙の母親は自分で探す前に智也に連絡をした。


連絡を受けた智也は自転車で走り回って美沙を見つけた。


その繰り返し。


結局、他の男と遊んでも縮まらない距離にいらいらしていた。


自分では探そうともしない母親にもあきれた。


誰にも必要とされてない気がして…



そんな感情が生まれてからは
学校にも行かない日が続いた。


朝、自分の居場所のない家を出て
適当に時間をつぶす。


街中にいればナンパされるし
気分が乗ったときはナンパ男についていく。


そんな毎日を過ごしていたとき、智也が美沙に会いに来た。


街から離れて、
静かな河原で1人で川を眺める美沙を
智也が自転車で探しにきた。


「やっと見つけた」


美沙の好きな笑顔で
笑いながら美沙の隣に座る智也に

横目をひっかけながら美沙が言う。


「…また親に言われた?」


ふてくされたように言う美沙を見て智也が微笑む。


「言われてない。

オレが美沙に会いたかっただけ」


『会いたかっただけ』

智也のなんてことない言葉に美沙の胸が締め付けられる。




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