「ねぇ、智也は彼女とかいないの?」
毎週水曜日を智也の部屋で過ごすのが日課になっていた。
「ん~、引っ越すときに別れたんだ」
智也がベットの上で漫画を読みながら返事をする。
何気なく聞いた質問、
返ってくる言葉を予想なんかしてなかったからか
少しショックだった。
智也に彼女がいた。
ただそれだけなのに…
いても当たり前なのに…
なんだかショックで…
早く大きくなりたい。
強く思った。
智也を他の女に渡したくない。
その時、智也が好きなんだと初めて気づいた。
クラスの女子がよく騒いでいたのを思い出す。
席替えして席が近くなったのだの、給食当番が一緒になっただの
美沙はいつもくだらないと思いながら聞いていた。
その子達の気持ちが…
少しだけ分かった気がした。
『好き』
というよりは
『奪われたくない』
という独占欲のほうが強かった。
恋って案外激しい感情なんだな…
そんな事を思ったのを覚えてる。
智也を誰にも渡したくなかったの…
でもどう考えてもそれからのあたしの行動は間違ってた。
どうすれば智也を振り向かせられるのか、
そればっかり考えてたんだよ。
他の男なんてどうでもよかったの。
だけど…
智也にはまだ振り向いてもらえない。
あたしはいつまでも親戚のまま…?
智也の中にあたしへの恋愛感情は生まれないの?
どんなに頑張っても進む方向が間違ってるから
どこまで行っても智也が見つからない。
どうすれば智也の心の中に入れるんだろう。
あたしはずっとそればかり考えてたんだよ。
智也は知らないだろうけど…。
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