お正月のことがあってから、
美沙は何かと理由をつけては智也に会いにいった。
同じ市内に住んでいることが分かってからは
毎週毎週、会いに行った。
自分の中の何ていう感情がそうさせているのかは分からなかった。
ただなんとなく会わないと物足りないような…
不思議な感情だった。
クラスの男子にはないものを智也は持っていたし、
何かと突っかかってくる男子とは違う。
落ち着いた雰囲気、素直な笑顔、
何をとっても美沙よりも完全に大人で
クラスでは一目置かれている美沙も
智也になら素直に甘えられた。
人に甘えることが気持ちいいことなんだと初めて知った。
両親には…なんとなく甘えることが出来なかった。
あまり家に帰らない父親に、いつもピリピリしている母親。
そんな両親をなんとか繋ぎ止めたくて色々頑張ってみたが
所詮小学生の美沙には何もすることが出来なくて
家庭の冷え切った空気にも、もうすっかり慣れてしまった。
だからだろうか…
お正月のあの雰囲気が苦手なのは。
いつもはしないような両親の作り笑顔。
アットホームな雰囲気。
全てがしゃくに障った。
そんな時連れ出してくれたのが智也だった。
最初は半信半疑だった美沙も智也の笑顔に本当に救われていた。
でも言葉にするのは恥ずかしかったから…
その時はただ微笑んでいた。
いつもはしない笑顔。
ちゃんと笑えているか、本当は少し心配だった。
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