「美沙ちゃん、いくつ?」
隣を歩く智也が聞く。
「9歳。
智也は?」
美沙はクラスでも生意気な女で通っていた。
クラスのリーダー的存在の男の子にでも気に入らなければ平気でケンカを売る。
そんな女の子だった。
曲がったことが嫌いで、成績表にはいつも「とても真面目で」とかかれていて
それが美沙は気に入らなかった。
給食当番をちゃんと出来たからとか
係りの仕事ができたからとか
当たり前のことをしてほめられるのが気に入らない。
逆に、当番の掃除を当たり前のようにサボる男子が気に入らない。
だからケンカが絶えなかった。
小学生にいきなり呼び捨てにされた智也が苦笑いしながら答える。
「18歳(笑)
つぅか、呼び捨てかよ(笑)
別にいいけど、オレ美沙の倍も生きてるんだな」
あ…
呼び捨てにした。
両親と友達以外に呼び捨てにされたのなんて初めてで
なんだかちょっとだけくすぐったかった。
「このへんはいい所だな。
北海道もよかったけど」
車もろくに通らない道を見渡しながら智也が言う。
「…寂しくないの?
友達と離れちゃって」
智也が美沙に少しイジワルに笑いながら答える。
「もう大人だからね(笑)
それに、新しい人と知り合えるの楽しいし」
智也の横顔に美沙は顔を赤くした。
自分がとても子供じみたことを聞いてしまったような気がして。
クラスの中では大人びてるのに、
智也の前ではてんで子供の自分が恥ずかしかった。
たまに吹き付けてくる北風が
とても冷たかったのを覚えてる。
ねぇ、智也。
あたしはこの時からずっと智也に追いつきたいってそればっかり考えてたんだよ。
あたし、まだ追いつけない?
まだ…
並んで歩けないの?
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