車で1時間かけて親戚の家に向かう。


年明けて一番最初の行事が美沙は嫌いだった。


大人同士がしゃべりあって、暇な美沙はテレビの駅伝を眺める。


何が楽しいんだか分からない。


いとこはみんな成人してるため、子供は美沙1人だった。


父親の運転する車が親戚の家の前に止まる。


また、つまらない時間の始まり…


子供ながらにため息をつき美沙は母親の後ろを歩く。




お年玉をもらって、大人たちのおしゃべりの中ボーっとしてた時、

突然話しかけられた。


「久しぶりっ」


少し枯れた声に美沙が振り向くと背の高い学生服を着た男が立っていた。


…久しぶり?


美沙が記憶を呼び起こしていると学ラン男が笑い出した。


「うそ(笑)

つぅか、始めまして。


オレ、伊藤智也。

去年、こっちに越してきたんだ。


今まで北海道に住んでたから会わなかったけど
一応親戚だし仲良くしような」


笑顔がまぶしくて

まだ小学生だった美沙は笑顔を返すのが恥ずかしくて
だまってうなづいた。


「テレビつまんないでしょ。

外散歩でもしない?


ちょっと歩けば屋台でてるよ」


初めて会ったのに、笑顔を向けてくる智也に美沙も少しだけ笑った。



つまらなくてたまらないこの空間から連れ出してくれる事がうれしかった。




この時は


ただそれだけだった。



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