いつもの公園まで走ったところで武史が止まった。
「梓ちゃん、大丈夫?」
肩で息をしている梓を気づかうように武史が声をかける。
心配そうな武史を見ると梓が勢いよく武史の胸倉をつかんだ。
「何やってるんですか!
ケンカなんてやる人じゃないでしょ?!
平和主義だって…
言ってたのに…」
途中から梓の目に涙がにじんでいた。
「…ごめん」
武史の言葉に梓が武史のシャツを離す。
涙を見られたくなくて武史に背中を向ける。
そんな梓の背中を見ながら武史が口を開いた。
「梓ちゃんを泣かせたやつだって知ったら…
とまんなかったんだ。
どうしても…
殴ってやりたかった」
梓は背中で武史の言葉を聞いていた。
「奈緒ちゃんから聞いたんだ、梓ちゃんの元彼の話。
だから、あいつ見たとき、こいつかって思って…つい。
でも、亮来なかったら確実に負けてたしかっこ悪いな、オレ(笑)」
照れたように笑う武史に梓が振り向く。
「…かっこ悪くなんかないです。
すごく…うれしい」
まっすぐに武史を見つめて言う梓に武史が優しく微笑む。
「でも、ケンカはだめ。
いつもの…優しい先輩じゃなくなっちゃうから。
あたしの知ってる先輩じゃなくなちゃうから…
やです」
梓の言葉に武史が笑う。
「先輩??
さっきは『武ちゃん』っつってたくせに(笑)」
ニヤニヤ笑う武史に梓が顔を赤くする。
「つぅか、マジびびった。
『武ちゃん』って小さい頃、お袋に呼ばれてたからさ(笑)」
「だって…とっさで…」
赤くなった顔を隠しながら言う梓に武史が近づく。
「いいよ。
『武ちゃん』で…。
そのほうが恋人らしいしね」
武史の言葉に
梓が武史を見上げた。
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