「亮っ…どうしたんだよ」
武史は真也に乗ったまま亮に笑顔を向ける。
「…北村が行けっつぅから来てみたら
おまえが殴りかかったとこだったから加勢してやったんだろ?」
亮が足元の男を見下ろしながら言う。
…北村さん
桜木先輩に話してくれたんだ…
よかった…
「つぅか、ケンカ慣れしてねぇのに
こんな人数相手に勝てる訳ねぇだろ。
負けたら奈緒がつれてかれてたんだからな」
「や、だから頑張って阻止しようとしてたのに…
大体おまえがもっと早く…」
武史の言葉が止まる。
武史の隣で
梓が静かに泣いていた。
「…オレ奈緒送るから」
亮はそれだけ言うと奈緒をつれて車に向かった。
奈緒は少し心配そうに二人を振り返ったが
すぐに亮の後を追った。
静かになった校門に梓の泣き声が響く。
「梓ちゃ…」
武史が梓に声をかけようとした瞬間、
急に校庭がざわめきだした。
見ると校舎から数人の先生が出てくるところだった。
「やべっ!
梓ちゃんっ!」
武史は泣いている梓の手を掴むとその場から走り出した。
初めてしたケンカで少し痛めた拳が熱かった。
初めてつないだ梓の手に
武史の神経が右手に集中していた。
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