そんな梓の耳に飛び込んできたのは聞きなれた名前だった。
「水谷…なんだっけな。
とにかくすっげぇ可愛いんだよ」
「聞いたことないけどなぁ?」
「うちの中学じゃ跳びぬけてたんだぜ?
なんか放火事件か何かあってみんな避けてたからあまり話さなかったけど…
来週にでも行ってみるか!
高校の門で待ち伏せて」
真也の言葉に梓の足が止まる。
…待ち伏せ?
「大丈夫だって!
その事件のことでからかえば着いて来るんじゃね?
結構はぶられてたし、
高校中にバラすとか脅せば言うこと聞くって(笑)」
…―――!!
…止めなきゃっ!
あたしが止めなきゃ奈緒が…
奈緒がまた傷付くっ…
だけど…
梓の脳裏に1年前の出来事が鮮明によみがえる。
真也に言われたひどい言葉は今もすべて覚えている。
…恐い。
恐いよ…
「梓ちゃん?
どうかした?」
武史の問いかけに梓はハッとする。
そして武史の顔を見て首を振った。
「…なんでもないです」
「そ?じゃいいけど。
何かあったら言ってね。
オレ女心とかホントわかんないから(笑)」
武史の笑顔に愛想笑いを返した。
…奈緒ごめん
でも…
あたし傷付くのが恐い…
恐くて仕方ない…
ごめん
奈緒…
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