「…あたしはちっとも奈緒の力になってあげられなかったなぁって思ったら
ちょっとショックで…」
以前来た公園で
梓は武史に奈緒の事を相談していた。
「あたしには…
奈緒は強く映ってたから…
だからあたしは何でも相談できたんだ。
でも奈緒は弱音すら言った事なかった。
今考えてみれば当たり前だよね。
いつもは偉そうな態度でいるけど奈緒にとってはあたしなんか子供だもん。
そうな相手に相談なんかできないよね(笑)」
うつむきながら寂しそうに微笑む梓を見ていた武史が
座っていたベンチから立ち上がる。
「でも奈緒ちゃんは梓ちゃんを選んで相談したんじゃん?」
梓は逆光で眩しい武史の後ろ姿を見つめていた。
武史の周りからオレンジ色の光がもれていて思わず目を細める。
「子供だっていいじゃん。
大事なのは梓ちゃんが奈緒ちゃんを大切に思ってるかどうかだよ。
奈緒ちゃんは梓ちゃんの気持ちを分かってるから梓ちゃんに相談したんだよ。
亮を好きになったこととかさ。
今日本音を言ったのだって梓ちゃんだから言ったんだよ」
…分かっていた事でも
ありふれた言葉でも
武史が言うと『その通りだなぁ』と納得できた。
信じようと思えた。
…関先輩だから。
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