「梓ちゃん」
放課後、まだ帰らない生徒でざわめく中
武史が1年の教室を覗き込み梓を呼んだ。
「関先輩、どうしたんですか?」
梓が慌てた様子で武史に近寄って聞いた。
「同じ方向なんだし一緒に帰ろうかと思って…
何か予定ある?」
笑顔で言う武史に梓は勢いよく首を横に振った。
「だから、頭取れるって(笑)」
笑う武史に照れ笑いをして教室にカバンを取りに戻ると
奈緒がニコニコ笑いかけていることに気づいた。
「一緒に帰るんだ?
仲良しじゃん」
「ってゆうか、奈緒も途中まで一緒に帰ろうよ!
今日は桜木先輩迎え来てないんでしょ?」
思いがけない梓の言葉に奈緒が少し動揺しながら答える。
「来てはいないけど…
あたしはいいよ。
完全にオジャマだし(笑)」
「先輩!奈緒も一緒でいいですか?」
梓は奈緒の言葉を聞かずに武史に呼びかけた。
「もちろん!奈緒ちゃんなら大歓迎」
そう言って手を振る武史に奈緒は愛想笑いをした。
『奈緒ちゃんなら大歓迎』
…本当は奈緒と二人で帰りたいんじゃないのかな
あたし、桜木先輩の隣で関先輩が奈緒のこと見てたの知ってるよ…
奈緒を見つめてる目が…
すごく切なそうだったからなんだか印象に残ってるんだ。
あの目は…
もしかしたら関先輩は
奈緒のことが好きなの…?
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