次の日眠りから覚めても
頭に浮かぶのは武史の笑顔ばかりで…



あまりの気持ちの変化の早さに

戸惑うような…

うれしいような…



久しぶりに感じた恋の予感に顔を緩めながら
梓は学校へ向かった。



昨日の武史の不格好なお好み焼きの話とか

帰り送ってもらった事とか


何から報告しようかたくさん考えたのに

奈緒を見るなり梓の口から出た言葉は
頭の中で繰り返し考えた言葉ではなかった。


「どうしよぅ…

関先輩好きかも…」



言った梓でさえ驚いた言葉に


奈緒は優しく笑った。



自分の言葉に動揺していた梓も
奈緒の笑顔に…

次第に気持ちが落ち着き
照れたように笑った。




でも…

奈緒以外には話す気分になれなかった。



もしもまた裏切られた時

つらくなるのは自分だから…



「あたし…

臆病だよね…。
最初から関先輩を疑うなんて…失礼だよね」


移動教室の最中にポツリと言った梓に

奈緒は少ししてから答える。


「あたしも最初は亮の事信じてなかったよ」


びっくりして奈緒を見る梓に
奈緒は笑って続けた。


「だってひどい噂ばっかだったじゃん(笑)

信じられないよ」


『10人同時進行男』

『ポイ捨て男』


同時流れていた噂を思い出し
梓は少し笑ってうなづく。




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