『裏切られたくない』


そう強く思いながら


それでも誰かを好きになりたいって思ってた。



隣で幸せそうに笑う奈緒がうらやましくて…




あたしより何倍もつらい過去を持つ奈緒が

ずっと1人で抱え込んでいた奈緒が


桜木先輩に逢ってから変わった。



素直に笑うようになった。

たまに見せてた寂しそうな顔をしなくなった。


あたしに…


相談をしてくれた。



いつも隣にいたからわかるんだよ。


奈緒が今どんなに満たされているかが…




『あたしも変わりたい』

奈緒を見てて思ったんだ…


恐がって立ち止まっているんじゃなくて


誰かを好きになって一歩進みたいって…




奈緒が頑張って過去を乗り越えたように


あたしも…




誰かがそばにいてくれたら

また心から笑える気がするんだ…



誰かが…




梓の頭に武史の笑顔が浮かぶ。



もし…

関先輩の隣で笑えたら…
あの笑顔を隣で見ていられたら…





関先輩は…

きっと裏切らない。



怖いけど…


一歩踏み出す時に
関先輩が隣で笑ってくれたら頑張れる気がするんだ。



怖いけど…



武史の笑顔が

梓に小さな希望を与えていた。



武史の不格好なお好み焼きを思い出して

梓は笑みをこぼした。



真也の事を思い出して
あんなにすさんでいた気持ちが

嘘のように和らいでいった。


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