「・・・ふぅ」


帰ってからの私は家事で忙しかった。慣れたからと言って学生と家事の両立は物凄く大変なのだ。


お風呂からあがった私は鞄から、今日ルリから貰った手紙を出した。


桜色の封筒は儚くてルリを思わせる。


「さてさて・・・」


冷たいお気に入りのレモンティーを一口飲む。グラスをテーブルに置いて手紙の封を開けた。


ほんのりとルリの香がする。甘くて、気持ちの良い香は頭を酔わす。


「いきなりどうしたんだろう?」


私は読み終わった手紙を元のように封筒の中に入れて机にしまった。




ガシャンッ!!!!



「ッ!?・・・あ」


いきなりの音にびっくりして肩に力が入る。音のするほうをみると


本棚の上に飾っていた写真立てが音を立てて倒れた。


写真立ての中にはルリと私の写真が入っている!!


急いで写真立てを拾う。壊れていないか恐る恐る確認してみる。


(良かった・・・)


写真も写真立ても無事だった。


「でもどうして・・・」


写真立ては固定していた。落ちない筈なのに。


疑問に思いながらも写真立てを元の位置にしっかりと固定したのを確認してベッドに潜り込んだ。


写真立てが落ちてから、私の心には不安が広がっている。私に警鐘を鳴らしている・・・。


(なんだろう・・・こんなの初めて)


動悸が激しくなって苦しい。まるで緊張しているかのように・・・。


不安は消える事が無いけれど、こういう事はよくある。


私は早く眠りについてしまおうと、目を閉じて暗闇に身を預けた。

私はこの不安が何なのか分からなかった。


いや、私は気づいていたのかもしれなかった。


でもその時の私には、それに気付けなかったのだ・・・。