半分くらい洗い終わった時だった。

俺のシャツが引っ張られた。


「え?何?」

俺は皿を持ったまま振り返った。
彼女は少し俯きながら俺のポケットにメモを忍ばせる。
そしてバツが悪そうにそそくさとソファーに戻っていった。


「え?これじゃ今見れないじゃん。」


俺は手についた泡を流して手を拭いた。

ポケットの中のメモにはこう書かれてあった。
たった一言



『ありがとう』



「なんだ…
素直に言えるのか…こういう言葉。」


俺は自分にだけ聞こえるような声でそう呟いた。