目指す会社が近づいてくると、自然と千晶の顔が頭に浮かぶ。



「…千晶、何があったんでしょうね」

と呟くと、小山はチラリと萌に目線をやって、

「アートフィールに行くと言ってましたね。たしか僕が入社したときに、ちょうど催事をやっておられた会社だったと思うのですが…」

と心配そうに言った。



「そうなんですよー…その会社なんですけど…」

千晶も運が悪い、と萌は思った。

数ある取引先の中でも、こんなにタチの悪い相手はそういない。

たしか千晶は、催事中にも変な言いがかりをつけられていた。

とりあえず急いで出てきたので詳細はわからないが、今度も同じに違いない。



前回クレームを入れられたときは、千晶はいとこの崇文に絡みまくったと聞いている。

(…今回は、私に絡んできたりして…)

萌は、背中がモゾモゾした。