怖い女達

 二時間後、侵入された形跡は分からなかったものの、盗聴器が二つ見つかった。
 パソコンを置いてある机の下と、自宅の電話機が置いてある棚の後ろに。

 ナナコはどうやって、俺の自宅に侵入したんだ?
 玄関や窓の鍵は全て閉まっていたし、無理矢理開けた形跡なんてない。

 ピンポーン!

 ビクッと体が跳ね、俺はゆっくりと玄関に視線を向けた。

 ピンポーン! ピンポーン! ピンポーン!

 何度もチャイムを鳴らされ、俺は両手で耳を塞いだ。
 誰だ、こんなにしつこく……。まさか、やっぱりナナコなのか……。

 ブーッブーッ。

 今度は携帯電話が揺れている。
 俺は恐る恐る、携帯を見ると、ナナコからのメールだった。

『家にいるのは分かっているんだから、開けてよ』

 やっぱりナナコだ。
 どうしよう、俺はどうすればいいんだ。
 
 ガチャ。

 玄関が開いた音が聴こえ、俺の心臓は鼓動を速めた。

 視線は玄関に向けたまま凍りつき、じっと見ていると、一人の女性が入ってきたのである。


「やっぱり、家にいるじゃない。どうして開けてくれなかったの? メールもしたでしょ」


 俺は、入ってきた女の顔から、目を逸らすことも出来ず、口をぱくぱくするだけだった。

 何故ならその女、いや、ナナコの正体とは……。


「な、ナナコって、お前だったのか……」


「そうよ。あなたが会社の香苗って女と浮気してることなんて知ってたわ。だから、掲示板に、あなたが好きそうなトピックを立てて、待っていたのよ。これに懲りて、浮気なんてやめるのね」


「分かった。もう浮気はしない。俺が悪かった……」


 俺は力が抜け、愕然とした。
 
 ナナコの正体とは、別居中の妻だったのである。

 俺という獲物が網にかかり、妻は満足気な表情をして笑った。