「いえ、着物は持っていないんです。」 「え?」 驚いたように近藤さんが首をかしげた影がうつった。 「袴で出ます。」 「そうかぁ。」 「動きやすいですしね。万が一何かあったとき着物じゃ動けませんよね。」 「それもそうか。」 と、納得したように近藤さんはうなずいた。 「じゃぁ、あとでな。」と近藤さんは立ち去っていった。 また独りの時間。 道場にいたときは大して寂しいとは思わなかったのになぁ。 近藤さんたちと出会ってからどうしてだろうか。 やけに独りが寂しい。