耳のない男だった。 耳のない、というのは正しくないかもしれない。左耳が、焼け爛れたようになっていて、形がなく、まるで耳がないかのように見えたのだ。 料理の出来る男だった。 一見そんなこととは無縁と思われる風貌の。しかしその手指は長く、細く。まるで女のそれのように綺麗だった。 爪もいつもきれいに切りそろえられていて、野性的な雰囲気を纏うその見た目を完全に裏切っていた。