からかってやるつもりだったのに。

笑ってやるつもりだったのに。

その言葉の後が続くことはなかった。

気付けば、葉介の腕の中にいた。

抱き締められてるっていう感覚はなかった。

周りの目も気にしなかった。

これって、葉介が色んな女の子とやってるようないちゃつきじゃない!?

なんて、思う暇もなくて。

こみ上げる涙や感情に名前はない。

名前がないんじゃなくてただ複雑すぎて、説明できなかった。

「…そういう顔すんな。」

遥か頭上から聞こえる葉介の声に、こんなに身長差があったのか、と思い知らされる。