紫陽花なアイツ

あたしはいつもと同じように家に出た。

そうしたら、丁度隣から葉介も出ていた。

目があった。

「お…。」

おはよ、その一言を言おうと口を開いた。

でも。それから逃げるように、葉介はこっちに背中を向けた。

挨拶くらいっ。

あたしは鍵を乱暴に抜き取って、螺旋階段を降りた。

葉介の足音と自分の足音。

響くリズムは、揃っているようで。

「ねぇっ。」

あたしはその背中に言う。

葉介は止まる事はしない。

あたしとアイツの足音は揃っているようで。

揃ってなかった。