その兄さんの様子と言葉に、我慢しきれなかった感情が目から零れ落ちた。
「ほら、みろ…ヒッ…ウソ、ついてたじゃねぇか……っ…ヒック……」
せっかくシャワーが隠してくれた涙は言葉に乗ってしまい、オレはその顔を見られたくなくて両手で顔を覆った。
「ヒッ…うぅっ……」
「ア、アサヒ!?」
突然のことに驚いたのか、兄さんが素っ頓狂な声を出した。
「わ、悪かったよ、勝手に行ったりして。
行ったというか断る間がなかったというか……」
「一緒に、行く、うっ、恋人がいるなら…ヒッ…オレを、誘う、必要、ないじゃないかっ……ヒック」
「?恋人?誰が?」
なんだよ、まだ惚けるのかよ!
「今日、一緒にいたじゃ、ないかっ…ヒッ」
「一緒に?はて?
恋人に間違われるような人といたかな?」
いたじゃないかいたじゃないか!!
長い髪で色の白い美人といたじゃないか!
「うーん、一緒にいたのは拓海さんの奥さんだしなぁ……」
そうだよ、その人だよ!!
――――――――え?
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